食べて応援な食材のご紹介
2020年、ロイヤルグループと天丼てんや担当者は、鹿児島錦江湾を地元とするとある水産会社を通じて出会いました。
「日本には四季がある、てんやには旬がある」というてんやのブランドストーリーをお伝えすると、その想いにぴったりの価値ある天ぷら向きの素材があり、ぜひ紹介したいと「姫甘えび」をご紹介いただきました。かごしま深海魚研究会代表であり鹿児島大学水産学部の大富教授とは、3年間余りの取り組みを続けてまいりました。その年月を経て、ようやく2024年1月11日より全国の天丼てんやで、早春天丼のメイン素材として「姫甘えび」が発売に至りました。
桜島をとりまく鹿児島湾(錦江湾)には「とんとこ漁」と呼ばれる伝統的な底びき網漁業があります。十数年前までは、このエビはまだ食材としての価値が十分には認められておらず、網に入っても多くは海に戻されていました。
そこで私は、生物学的な研究と並行して、このエビの認知度向上と販路開拓のための取り組みを始めました。甘みが強くとても美味しいにもかかわらず知られていないこの“もったいない”エビを流通させ、漁業者の収入アップを目指したわけです。
私たちの研究により、北海道や北陸などでよく獲られるホッコクアカエビ(通称、甘海老)と同じ仲間の深海性のタラバエビ科のエビではあるものの、まだ和名のないエビであることがわかりました。そこで私は、2009年にヒメアマエビと命名しました。
その後、ヒメアマエビの人気は急上昇しました。市場では高値で取引されるようになり、漁業者のモチベーションはアップしました。錦江湾のサクセスストーリー第1号がヒメアマエビなのです。
2020年8月に産学官で設立した、かごしま深海魚研究会の大目的は、漁業者の収入とモチベーションを上げ、次世代の漁業後継者を絶やさないことです。その手段として、「うんまか深海魚」のブランドで低・未利用水産資源の有効利用策を構築します。
現時点で流通していない未利用種も含め、まずは相対売りによる流通システムを構築しました。我々の趣旨に賛同いただいた料理店やスーパー、企業では「うんまか深海魚」の料理の提供、鮮魚、加工品の販売を行います。一過性のブーム作りではなく、水産業、外食産業、観光産業をリンクさせ、持続的展開により食文化を創ります。
“もったいない”状態だったヒメアマエビはヒーロー的存在になり、今では「うんまか深海魚」の代表格です。SDGs12の「つくる責任つかう責任」は「とる責任たべる責任」とも解釈され、それをクリアしたヒメアマエビの存在は漁業者の働きがい(SDGs8)につながりました。
かごしま深海魚研究会はパートナーシップで取り組んでおり(SDGs17)、健康に良い安心安全な地魚(SDGs3)の適正な利用により、次世代のために海の豊かさを守ります(SDGs14)。